田村地方医療確保対策協議会の提言

田村地方の医療体制について緊急に取り組むべき対策の提言

田村市長様

三春町長様

小野町長様

            平成29年2月8日

                 田村地方医療確保対策協議会長

1 はじめに

今、我が国は世界でも例を見ない少子高齢化と人口減少社会を迎え、国の社会保障制度も大きな改変を迫られている。その取組の一つとして、団塊の世代が後期高齢者となる2025年に向け、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築と、その基盤となる地域医療提供体制を整備すべき医療計画「地域医療構想」に基づく取組が全国全ての地域に求められている。

田村地域は、平成27年国勢調査の結果、高齢化率が30.9%で、県28.7%、国26.6%と比較し高い割合になっている。さらには、平成17年から27年の10年間で総人口が9.8%減少するなど、県や国と比較して急速に少子高齢、人口減少が進んでいる状況にあり、他の地域に先駆けて新しい取組に対応していく必要がある。

2 田村地域の医療現状等

田村地方の医療体制については、郡山地域に匹敵するエリアを有しているにもかかわらず郡山市の約1/20の医師数でこの地方の医療・福祉を担っている状況である。加えて、田村市、三春町、小野町にそれぞれ1病院設置されているが、医師の確保が進まず特に救急医療の分野では搬送件数の約8割を郡山市内の医療機関に依存している状況にあるなど、地域の中核病院としてその責を全うしている状態ではない。

さらに、2025年の状況を推測してみると、医師の高齢化が進み現状の1/3の医師は現役を退き、その後継者もいない状態になった場合、地域での通常診療や学校医、産業医の確保はもとより、地域包括ケアシステムや在宅医療等への対応は物理的に困難となることが想定され、極めて厳しい状況にある。

3 緊急に取り組むべき事項

  田村地方は、県中医療圏の中でも医療資源が乏しい地域であることを踏まえると、住民の医療ニーズの全てに対応することは困難である。したがって、特にニーズが高く地域で完結又は他地域の医療機関との連携等によりカバーできる医療に焦点をあて、既存の医療資源の機能を如何に高めていくかが今後の取組の重要なポイントであると考える。

具体的には、次の事項について重点的に取り組む必要がある。

(1)病院の医師等の確保を図り救急医療体制を充実強化すること

田村地方における1年間の救急搬送件数は約3,200件となっており、その約8割が郡山市内の病院に搬送されている。また、搬送患者の疾患状況では、内科系が約5割を占め、次いで整形外科が約2割弱となっており、その中には軽症患者の割合が相当数含まれていると考えられる。

したがって、初期救急及び中程度の救急患者を田村地域の病院で受け入れられるよう、病院の医師等医療スタッフの確保対策の検討を早急に進め、救急医療体制を充実強化すること。

(2)在宅医療の提供基盤となるシステムを構築すること

在宅医療は、地域医療構想の中でも今後需要が増えると想定されており、地域包括ケアシステムの中でも、24時間体制の医療となる。田村地方における今後の在宅医療ニーズや持続性を考えた場合、医師個々人のみの対応(努力)には限界がある。

したがって、訪問診療、訪問看護、訪問リハビリ、訪問薬剤指導などの切れ目のない提供や、在宅患者の病状急変に備えた後方支援病床の確保やレスパイト病床の確保など、地域ニーズへの適切な対応やその持続性をしっかり担保できる体系的な在宅医療提供システムを速やかに構築すること。

(3)実効ある医師の確保対策に取り組むこと

今、全国的に大都市部以外の地域では医師不足となっており、本県は全国平均と比べると極めて厳しいグループに属している。この現象は、医師の絶対数が足りない問題もあるが、地域偏在が大きな影響を及ぼしている。

田村地方の医師数は、全国的にも厳しい本県の中でもさらに厳しい地域となっているが、現状を踏まえるとこれまでの医師招聘の取組だけでは効果は期待できないと考えられる。

今後の取組においては、若手医師が来たがる院内体制の改革、将来的に研修病院を目指した中堅医師の確保、医科大学への寄附講座の開設支援など中長期的な視点に立ち地域が一丸となって取り組むことが重要である。

(4)いわき・双葉郡の医療支援を担える体制づくり

公立小野町地方綜合病院は、川内村、いわき市が加わった運営であること等を踏まえると、いわき市の医療機関との連携や双葉郡の患者の受け入れ等いわき・双葉地域の医療を支援する体制も考える必要があることから、こうした観点での体制づくりが必要である。

4 おわりに

冒頭にも述べた地域包括ケアシステムの構築は、高齢化が進む田村地域の住民の生活環境の質を向上させるだけではなく、若者の定着ひいては地域の振興にもつながる幅広い取組である。そしてそのシステム構築の成否は、地域のニーズに沿った医療提供体制を、いつまでに、どのように充実強化できるかに懸かっている。

医療提供体制の充実強化にあたっては、関係機関が前記課題に真摯に向き合い認識を共有するとともに、先ずは行政が主導的に思い切った意識・組織改革を行い、推進体制をしっかりと整備する必要がある。