地域の皆様へ~今後の長期的健康管理の重要性について~

地域の皆様へ

今後の長期的健康管理の重要性について

3月の福島第一原子力発電所の事故以来、本県は地域による程度の差こそあれ、放射性物質の影響下にあります。

管区の自治体である田村市、三春町、小野町における環境放射線量は福島市、郡山市などに比べても低い値であり、医師の立場から見れば、それほど気にすることがないと考えられますが、住民の皆さんは、特に妊婦さんや乳幼児、成長期のお子さんをお持ちの皆さんは、さまざまな場所から発信される多くの情報の中で混乱され、不安になることも多いと考えられます。

医師会では、9月8日に管区自治体の職員の皆さん、教育現場職員の皆さん、自治体の議会議員さん、行政区長の皆さんなど、住民の皆さんから放射線についての質問を受けることが想定される方々を対象に、「地域の医師と共有する放射線の知識と今後」というタイトルで研修会を開催し、医師会がそれまでに把握した情報を開示、見解を示しました。

ご存じのように、その内容は、自治体を通して住民の皆さんにUstreamで開示されております。お住まいの行政区をとおしてアクセス方法を自治体の担当課(保健福祉課・健康福祉課など)へお問い合わせください。

また田村市からの依頼を受け、行政区ごとに開催される放射線教室全5回に講師(石塚会長)を派遣いたしております。

この9月の研修会に参加された皆さん、また田村市の放射線教室に参加された皆さんは、すでにご存じのことですが、医師会では住民の皆さんにとって一番の福利となるものは、今後の長期にわたる健康管理体制の充実であると考えます。

チェルノブイリの放射性物質の影響で子どもたちに甲状腺がんの発症がみられたことから、県立医大では、子どもたち、若年齢層の県民を中心に甲状腺の検診を開始しました。

今後、成長の過程で何らかの変化が見られた場合に初期の基礎データが対照データとして役立つという構想のもとに、正確なデータを作成していると考えられます。

このような、全世界的にかつて同様の条件下でとられたことのないデータは、放射線の影響を研究する分野で貴重なものになることは言うまでもありません。

しかしながら、低線量放射線の影響下で過ごしているのは、子どもたちや若者ばかりではありません。医師会では、管区自治体との連携の下、健康診査項目を新たに増やすことにより、今後も低線量放射線という環境下で長期に生活する住民の皆さんの健康管理を充実させ、さらに日常の診療の中で、地域の「かかりつけ医師」が、住民の皆さんの微妙な変化も見落とさずに、疾患の早期発見に努めていくことが重要であると考えております。

自らも住民である医師たちが、住民の皆さんとともに生活するなかで、生命と健康を守っていくという姿勢で活動してまいります。

県が実施するホールボディーカウンター測定について

さて、福島県では現在、福島第一原子力発電所の放射性物質拡散事故による放射線の影響が大きかったと考えられる地域の方々を対象に、ホールボディーカウンターによる内部被ばく量測定を順次実施しています。11月1日の時点ですでに6,000人以上の測定を実施しました。

この測定を、今後は放射線量が低い地域でも、希望者であれば誰でも受けられるようにする方針で、更に5台の移動式のホールボディーカウンターを導入、そのうち1台の計測は11月中に開始されます。

ホールボディーカウンターによる内部被ばく測定を実施する場合に重要なことは、測定そのものではなく、むしろその際の説明や解析であり、県ではそのための人材育成をすでに行なっています。

福島県ではこの測定結果の解析(判定)を、千葉にある法医研と東海村JOCに依頼しています。

測定結果の解析分析は特に重要なので、測定を開始する時のデータベースづくりが非常に慎重になされるべきということですが、この点を医師会は重要な要件と考えます。

今後、県が線量の高い地域から順次実施するホールボディーカウンターによる内部被ばく量測定検査の結果は、県により正式に管理されます。そして、県、県医師会との連携の下、私たち地域の医師は、管区の皆さんの健康管理に力を尽くしてまいります。

医師会の立場から言えば、田村医師会管区のこの地域の住民の皆さんが一刻を争って内部被ばく量の測定を受ける必要性があるとは考えられませんが、どうしても希望される方には、個人情報の取り扱い、長期的な解析と健康管理の面から、少々の待ち時間はあっても、福島県が実施するホールボディーカウンターによる測定を受けていただくことが最良の選択であると考えます。

県民健康調査の回答から、早急に検査を受ける必要があると考えられる場合には、県が早期の測定を実施することになると考えます。

県、そして県医師会は真剣に県民の健康と福利を考えております。

私たち地域の医師会では、今後の長い年月、地域の皆さんの健康管理を強化し、放射線の影響下であろうとも、心身ともに健康な長寿を全うしていただくために邁進してまいります。

県、県医師会、そして今後の地域の皆さんの健康管理を担う私たち田村医師会の医師たちとともに、歩んでいただきたいと考えます。